図書館スタッフの本質的ウェルネスのためのベストプラクティス

2021年度のバーチャルER&Lカンファレンスで「Essential Wellness」(本質的なウェルネス)というパネルディスカッションが開催され、パンデミック以降、図書館で働く個人および集団としての経験がどのようなものになっているかが考察されました。私たち全員がどのように自分自身をケアし、図書館スタッフの健康、安全な労働条件、個人としてのウェルビーイングを推し進めていくかというトピックについて、多種多様な見解が共有されました。このセッションを視聴したTaylor & Francisから、個人としてのウェルネスおよび図書館全体でのウェルネスに重点的に取り組むためのベストプラクティスについて学んだことの要点をご紹介したいと思います。

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自分の感情を理解し表現する

Egg Feelings

パンデミックが継続していた間、私たちは社会的に隔離された環境に身を置き、人との直接対面を避けることを余儀なくされました。さまざまな研究から、この経験によって恥の感覚や不安感、抑うつ、怒り、苛立ち、不眠、無力感、仕事をやめたくなる、士気が下がる、家族のことが心配でたまらなくなる、漠然とした虚しさを感じるといった感情が生まれたことがわかっています。また、サバイバーズギルト(自分が生き残ったことに対する罪悪感)や今にきっと悪いことが起こるに違いないと感じ恐れる気持ちを持ってしまうことも多くなっています。自身のこうした感情に気づき、認め、表現すること、こうした感情から学ぶこと、こうした感情を健全な解決策や表出方法によって安全な形で表現することが、図書館で働く人々にとってもきわめて重要になっています。マイナスの感情を乗り越えるには、支えてくれる人に頼る、本や音楽やポッドキャストを活用する、メンタルヘルスのプロに相談するなどの方法が効果的です。

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職場環境での安全と本質的ウェルネス

Workplace Enivronment

図書館で働く人々が、安全でない労働条件を問答無用で押しつけられて納得できないと感じるときは、それを拒否する権利があるということを、強く周知していく必要があります。十分な休業、有給休暇、病気休暇を取得できることも大切です。休むことで、職員は状況の変化について気持ちを整理する時間を持つことができます。また、依然として図書館スタッフが負っている過剰な負担と仕事量を軽減するため、多くの図書館において、マイクロマネジメントをやめて自律性を高めていこうという動きが始まっています。人事部の手続きを介さずに心を休めるためのリフレッシュ休暇を取る権利を持つこと、仕事量を調節してもらう必要があると感じたときに上司と率直な話し合いを持てること、激しい疲労感やストレスの限界を感じたときはそのことをオープンに表明できること。いずれも、現在の図書館の労働環境における差し迫った課題です。また、対面であれリモートであれ、物理的な仕事環境という点でいえば、自然光、植物、ひと休みして散歩できる場所があることも、精神と感情のウェルネスを高める要素として推奨されています。

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バーチャルな交流の効果

zoom call with coffee cup

パンデミックの結果としてもたらされた課題の中でもっとも大きなものは、おそらく対面からオンラインへという働き方の変化でしょう。孤立と分断を防ぐため、個々の状況に応じたさまざまなレベルでのデジタルな手段によって人とのつながりを持てるようにすることが、多くの図書館スタッフがリモートワークによる精神的・心理的影響に対処する上で有効だったことが実証されています。料理やヨガ、瞑想のバーチャルレッスン、バーチャルお茶会、チーム制のデジタルゲームなどには、多くの図書館スタッフの士気や生産性を高め、目的意識や仲間意識を取り戻す効果があったといいます。

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ワークライフバランスの意味を問い直す

man balancing on log

私たちがパンデミック前に「ワークライフバランス」と呼んでいたものは、リモートワークやリモート学習が広まった今、改めてその意味を問い直す必要に迫られています。さまざまな研究から、リモートワークをする人は、そうでない人よりオンラインになる時間も労働時間も長く、在宅勤務時の私生活と仕事の切り分けを困難に感じていることがわかっています。このように公私の領域が重なり合い境界があいまいになりがちであるという問題に対処する上では、まず自分を大切にしなければ人を大切にすることはできないのだと認めることが重要です。健全なバランスを保つことができるよう、ウェルネスを整えるさまざまな方法を取り入れて自身をケアすることが今後、対面であれリモートであれ仕事をしていく上で非常に重要になるでしょう。

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これからのこと

crosswalk stoplight

図書館運営の面では、一つ一つの決定が現実の人々の生活を左右するのだということをパンデミックによって常に意識させられることになりました。物事を変えようとするときには、このことを特に意識する必要があります。パンデミックの前から存在し、パンデミックによって悪い方向に変化した事柄によって問題がいっそう複雑になるからです。図書館スタッフと図書館スタッフの権利を尊重する形で状況の変化に適切に対応することが、今ほど重要になったことはないでしょう。図書館で働く人々がそれぞれオープンマインドを持つこと、柔軟性を心がけること、互いに競争ではなく協力して仕事をすること、そして個人としてのウェルネスを常に第一に考えることがきわめて重要になっており、こうしたことが長い目で見れば図書館全体にとって好ましい結果につながります。

学術機関コミュニティのウェルネス増進について、他にもさまざまなアプローチをご紹介しています。Academic Wellness Hub(アカデミックウェルネスハブ)からご覧いただけます。

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